天才外科医は仮初の妻を手放したくない
「澪、悪かったな…また恐い思いをさせてしまった。」
私は陽斗の腕をギュッと掴んだ。
早乙女が言った言葉は確かに私も感じていない事では無かった。
「陽斗さん、守って頂き有難うございます。でも、確かに早乙女さんの言っていることも分かるんです。私には陽斗さんは勿体ない存在だと思います。私なんかではなく、もっと素敵な女性がお似合いです。」
すると陽斗は外なのに、私を引き寄せると自分の胸に抱き寄せたのだった。
周りからは驚いた黄色い声がキャーッと聞こえて来る。
「陽斗さん、外では恥ずかしいです。皆が見ていますよ。」
「澪、俺は誰に見られようと構わない。初めて本人に言うが、俺は澪を自分でも驚くほどに好きになっているようだ。澪を愛している。だから自分にもっと自信を持て。俺には澪が最高の女性だ。」
心臓の音が大きくなり、陽斗に聞こえてしまいそうだ。
顔は火を噴きそうに熱くなり爆発しそうだった。
その時、先程黄色い声を出した女性たちが、こちらを見ながら笑顔で一人二人と拍手を始めてくれたのだ。
いつしか私達の周りで拍手が起きている。
「素敵だわ、おめでとう。」
「なんか幸せそうで、おめでとう!」
私達は恥ずかしくなり、皆に向かって照れながらお辞儀をした。
すると、さらに拍手は大きくなったのだ。
知らない人たちからこんなにも祝福されると照れくさいが、とても嬉しい気持ちになる。