天才外科医は仮初の妻を手放したくない

大久保はその日の最終便の船で帰ってしまった。

泊っていくように勧めたが、もう十分に陽斗の様子が分かったから安心したと言って帰ってしまったのだ。

大久保は良い人と思うが、掴みどころのない嵐のような男性だと感じていた。


それから一週間後、田中のじいちゃんはもう起き上がることが出来るようになっていた。
お嬢さんに支えられながら診療所に来ていた。

「先生、それともう一人の先生になんとお礼を言って良いかわからねぇ…本当にありがとうごぜいますだ。」

そして田中のじいちゃんは大きな鯛を一匹持って来てくれたのだ。
じいちゃんの家は代々漁師で孫娘の夫が今釣って来たばかりだという。

すごく立派な鯛に思わず声を出してしまった。

「まぁ、すごく立派な鯛ですね。こんな大きな鯛は初めて見ました。」

田中のじいちゃんはそれを聞いて嬉しそうに応えた。

「これは大きいだけじゃないぞ、味も最高だべ。鯛めしも美味いし、塩焼きだって最高だ。」

田中のじいちゃんのが助かった手術は瞬く間に島中で有名な話になり、島中からお礼の品としてご馳走が届いたのだった。


「陽斗さん、すごいご馳走で嬉しいですね。」



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