天才外科医は仮初の妻を手放したくない

陽斗の診療所の噂は隣の島にまで広がり、だんだんと隣の島からも患者さんが来るようになり忙しくなっていた。

そんな時、そこへ一人の若い男性が訪ねて来たのだ。
見るからに好青年という雰囲気だ。
髪は短髪で清潔感があり、笑顔が爽やかな青年だった。

「西園寺先生、僕はまだ医師免許を取れたばかりの研修生です。どうか先生の元で勉強させてください。」

陽斗は驚いたようにその青年に話をした。

「とても嬉しいけれど、なんでこんな小さな診療所で研修医をするのかい?大きな病院の方が良いのではないかな?」

するとその青年は目を輝かせて話し出したのだ。

「僕は以前に先生の手術で助けられたんです。それ以来先生を目標に勉強して医師になりました。だから先生にいろいろ教えて頂きたいのです。」

陽斗は少し困った表情をした。

「ここでは君に十分なお給料もあげられないかも知れないし、設備も無い…それでも良いのかい?」

「はい、僕は 日下部 圭(くさかべ けい)と言います。よろしくお願いします。」



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