天才外科医は仮初の妻を手放したくない

「これからの医療はお前に任せたい。誰もが平等に医療が受けられる仕組みを、おまえなら作れると私は確信している。」

「父さん、それはどういう事なのですか?」


お父さんは陽斗を見てもう一度微笑んだ。


「この病院も、これからの日本の医療も、お前が西園寺の当主となって変えていって欲しい。私には出来なかったことだが、陽斗ならできるだろ。」


陽斗は島の診療所で働いてから、地方や離島の医療を改善したいといつも言っていた。
確かに一人の医師では出来ることもたかが知れている。
しかし、西園寺の大きな力を使えば、大きな改革も夢では無いのだ。


「お父さん、それは僕も願っていたことだから、やりたいと思っています。でも一つ確認したい事があります。それは、澪のことです。澪を僕の妻として認めてくれるのなら、西園寺の当主は引き受けます。…まだ一条の令嬢と婚約しろなんて言わないですよね。」

お父さんは陽斗の話を聞いてクックッと笑い始めた。

「一条の令嬢は、お前の従兄と結婚させたよ。それにあの子がお前と一緒に小さな診療所について行くと思うか?」


「…それでは、澪を僕の妻として認めてくれるんですよね。」


お父さんは大きく頷き、お母さんの方を見た。
お母さんは私を見ながら口を開いた。


「澪さん、明日から西園寺の嫁としての教育をビシビシと行きますからね。」

「お…お義母さん、ありがとうございます。」



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