天才外科医は仮初の妻を手放したくない
その日の夜、久しぶりに陽斗のマンションに私達は帰って来たのだ。
私はもうとっくにマンションは引き払っていたと思っていたので、少し驚いている。
私達はベランダに出て風に当たりながら話を始めた
空には星がキラキラと瞬いている。
「陽斗さん、このマンションはそのまま持っていたのですね。」
すると陽斗は少し自慢するような表情をした。
「俺はいつかここに戻ってくると最初から思っていたんだ。ただ少し予定よりも早かったけどな。」
「陽斗さん、私はもうマンションもすべて引き上げたと思っていました。」
陽斗は微笑ながら私の頬に手を添えた。
「澪、僕と結婚してくれませんか。」
「…っえ、だってもう…」
私が何か言おうとした時、私の言葉を陽斗の唇が塞いだのだった。
突然の口づけに心臓が大きな音を鳴らす。
「愛しているよ…澪、これからは本当の夫婦になってくれないか。」
「…はい。」
陽斗はもう一度私の唇に口づけをした。
今度は触れるだけではなく、私の奥深くまで探るような熱く優しい口づけだった。
「…陽斗さん、私も愛しています。」
その日、初めて私達は結ばれた。
お互いを想い合いながら、何度も何度も身体を重ねたのだった。
心も体も陽斗と一つになれた嬉しさで私の目から涙が溢れていた。