天才外科医は仮初の妻を手放したくない
「澪さん、お花をそんなに乱暴に扱わないの!」
嫁教育の最初はお花の生け方などから始まった。
お茶とお花は嫁としての嗜みだと言われている。
「はぁ~もうだめだ。」
お花のレッスンが一段落して、休憩時間に西園寺のメイドさんがお茶を出してくれた。
西園寺家には執事やメイドさんが沢山働いているのだ。
執事とかメイドさんとか本物を見たのは初めてだった
「奥様、頑張ってくださいね。お疲れのようなので、ホットチョコレートにしてみました。」
まだ20代前半のメイドさんが、ホットチョコレートとクッキーを持って来てくれた。
黒いワンピースに白いエプロンがとても可愛い。
その表情にも癒される。
「ありがとうございます。」
次の教育は西園寺家の歴史だった。
先生で来てくれたのは、村瀬だった。
村瀬はこの家の執事長だったのだ。
「奥様、これから西園寺家の歴史についてお話しますね…」
村瀬は優しいが、内容が難しく眠くなってしまいそうだ。
眠気と戦うために私は何度も自分の頬を両手でパチパチと叩いた。
その様子を見ない振りをしながらも、村瀬はクスッと笑っているのだった。
長い長い嫁教育から解放されたのは、もう夕方の5時を回ったころだった。
私は近くのスーパーマーケットで買い物をして帰ることにした。