天才外科医は仮初の妻を手放したくない
ベッドに入り目を閉じるが、なかなか眠ることが出来ない。
昨日聞いた真由の話や、朝帰りをした陽斗のことで頭がいっぱいだったのだ。
しかし、連日の西園寺家の教育などで疲れていた私は知らないうちに眠りについていたのだった。
目が覚めて部屋を出ると、もう陽斗の姿はなかった。
少しホッとしている自分がいた。
もう少しで西園寺家のお稽古が始めるが、今日は体調不良だと連絡をしてお休みを貰ってしまった。
陽斗は私を裏切っているのだろうか。
しかし、私は陽斗を信じたかった。
何か理由があるに違いないと自分に言い聞かせる事にした。
心が沈んでいるとき、私の携帯電話に懐かしい着信があったのだ。
それは、島にいる日下部からの連絡だった。
「澪さん、お元気ですか?」
「日下部君こそ元気なの?」
日下部は元気に診療所を守ってくれていた。
先週からもう一人医師が派遣されることになったと言っている。
大病院に連携を依頼したことで、医師を順番に派遣してくれることになったらしい。
「島のみんなは元気ですか?」
「はい、最近は定期的に健康診断も初めて元気にしていますよ。西園寺先生によろしくお伝えくださいね。」
何故か今は陽斗の名前を聞くたびに胸がズキッと痛むのだった。