天才外科医は仮初の妻を手放したくない
すると、西園寺は唇を離すとすぐに私が何か言えないようにと、自分の胸に私を抱き寄せて話をさせないような姿勢を取ったのだ。
そして自分はカメラを向けている皆さんの方を向いた。
「妻はとても恥ずかしがりやなので、このくらいでお許しください。」
私が余計なことを言えないようにしたのだろうが、西園寺の胸に抱き寄せられると、不覚にも心臓が大きく鼓動してしまう。
西園寺の使っている香水なのか、とても良い香りがする。
さらに私が彼の胸から離れた瞬間、西園寺は私の顔を覗き込み、皆から見えない側の口角を上げ、片眉を上げたのだ。
(…なに!この男は…なんか私をからかって喜んでる!!)
私は小さくコホッと咳ばらいをして、皆の方を見た。
皆がこちらを向いている。
何故か分からないが、この男にバカにされたくないという気持ちになり、私は皆に向かって少し恥じらいながら微笑を向けてみたのだ。
人生最大の演技かも知れない。
一瞬沈黙した後、皆から再度の拍手とお祝いの言葉が飛んできた。
考えてみたら、政財界の方々や来賓、西園寺家の関係者は私の事を知らないのは当然だが、新婦側の関係者である一条家の方々は本物の新婦の顔を知っているのに、誰も怪訝な顔一つしない。
私には理解できないが、これが政略結婚という恐い世界なのだろうか。
そして自分はカメラを向けている皆さんの方を向いた。
「妻はとても恥ずかしがりやなので、このくらいでお許しください。」
私が余計なことを言えないようにしたのだろうが、西園寺の胸に抱き寄せられると、不覚にも心臓が大きく鼓動してしまう。
西園寺の使っている香水なのか、とても良い香りがする。
さらに私が彼の胸から離れた瞬間、西園寺は私の顔を覗き込み、皆から見えない側の口角を上げ、片眉を上げたのだ。
(…なに!この男は…なんか私をからかって喜んでる!!)
私は小さくコホッと咳ばらいをして、皆の方を見た。
皆がこちらを向いている。
何故か分からないが、この男にバカにされたくないという気持ちになり、私は皆に向かって少し恥じらいながら微笑を向けてみたのだ。
人生最大の演技かも知れない。
一瞬沈黙した後、皆から再度の拍手とお祝いの言葉が飛んできた。
考えてみたら、政財界の方々や来賓、西園寺家の関係者は私の事を知らないのは当然だが、新婦側の関係者である一条家の方々は本物の新婦の顔を知っているのに、誰も怪訝な顔一つしない。
私には理解できないが、これが政略結婚という恐い世界なのだろうか。