天才外科医は仮初の妻を手放したくない
「島には病院船、陸の地方にある村や町には、病院大型バスをもっと普及させたいんだ。」
藤村と日下部は陽斗の言葉を興味深そうに聞いている。
「都市も地方も同じように医療を受けられることが理想なんだよ。」
二人は同時に頷いた。
陽斗はさらに話を続ける。
「僕は、西園寺の当主なんて興味ないんだ。でもね、一人の医師の力より、西園寺の力の方がいろいろやりたいことが出来そうなんで引き受けたんだ。」
陽斗の話に二人は目を輝かせている。
そして最後に陽斗は立ち上がり、二人に笑顔を見せた。
「さぁ、これから午後の診療は僕も参加させてもらいたいな。…僕の本当にやりたいことはこれなんだ。どこまで行っても僕は医者だからね。」
陽斗の希望通り、午後は陽斗も診療に参加した。
そして、私も久しぶりに受付に立つことにした。
「あらあら…まあまあ…澪ちゃんじゃないかい…久しぶりだねぇ」
受付に私が立つと、皆が私を覚えていてくれた。
なんだかとても嬉しい気持ちになった。
陽斗も同じ気持ちだったようだ。
「西園寺先生、久しぶりだね。今日は診察してくれるのかい。」
陽斗がとても生き生きしているように見える。
私達が最後の患者さんを送り出し、片付けを始めた時だった・
田中のじいちゃんが私達を呼びに来たのだ。
「先生たち、これから島の皆で先生たちの歓迎会を浜辺でしようという事になったんだ。来てくれるかい。」