天才外科医は仮初の妻を手放したくない
歓迎会が終わり皆が解散した後、陽斗と私は浜辺をゆっくりと散歩したのだった。
変わらない海の音、潮の香、そして都会では見ることのできない、空一面の瞬く星空。
なんだか心から癒される幸せな時間に感じるのだった。
陽斗は何か思いついたように私を見た。
「ねぇ、澪、今度は澪のご両親も呼んで身内や友達だけの結婚式をしないか。」
「陽斗さん、嬉しいです。」
陽斗との出会いは身代わりの結婚式だったが、私達の結婚式はしていないのと同じだ。
それに、父や母にも私のウェディング姿を見せたかったのだ。
その時、空から流れ星が流れた。
「陽斗さん、流れ星です!」
「凄いな…なんか澪といっしょにいると楽しい出来事にたくさん遭遇できるな。」
あっという間の一週間だった。
今日はもう島から帰る日だ。
島の皆から野菜などのたくさんお土産をもらって船に乗り込んだ。
「先生~また来てくださいね!」
皆がヒラヒラと手を振って見送ってくれた。
日下部は勿論のこと、陽斗に憧れている藤村も本当に寂しそうな顔をしている。
陽斗が二人に声を掛けた。
「診療所はお前たちに任せたからな!頼んだぞ!」
二人は大きく頷くのだった。