天才外科医は仮初の妻を手放したくない
「澪、本当に一人で大丈夫なのか。」
朝から陽斗さんが心配そうに声を掛けた。
雫が生まれてから初めての陽斗さんの出張なのだ。
今回は10日間ということもあり、陽斗は心配で仕方ない様子だった。
「大丈夫ですから…心配しないでくださいね。」
陽斗は雫と私の頬にいつもより長くキスをした。
「何かればすぐに連絡してくれ!」
陽斗は玄関で後ろ髪を引かれる思いのようだ。
「パパ~行ってらっしゃい。」
雫はまだしっかり話せないが、私が雫の手を振らせて陽斗を送り出した。
「パパは心配症で困りまちゅねぇ」
私は雫をベビーカーに寝かせてお買い物に出ることにした。
ベビーカーに鞄を掛けて、雫を寝かせると出発だ。
ベビーカーを押しながら歩いていると、後ろから誰かが私の名前を呼んだのだ。
「西園寺さん、西園寺澪さんですよね。」