天才外科医は仮初の妻を手放したくない


「どうしよう…陽斗さんもいないし…。」

陽斗は出張中で迷惑はかけられない。
私は陽斗の実家である西園寺家へと走ったのだ。


「私がすべて悪いのです…雫が…雫が…。」


お義母さんは私の慌て方に驚き、私の肩に両手を置いた。


「澪さん、大丈夫ですよ。ゆっくり話をして。」


「お義母さん、雫が…雫が…誘拐されたみたいなんです!」


「なんですって!!」


私達の声を聞いて、お義父さんと村瀬が駆け寄って来た。


「澪さん、状況を詳しく教えてくれないか。そして陽斗はこのことを知っているのかい。」


「陽斗さんは出張中でお話していません。雫を連れて行ったのは、パパの育児教室で先生をしている萩原という女性なんです。」




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