天才外科医は仮初の妻を手放したくない
「澪!大丈夫か?」
大きな声を出して駆け付けたのは陽斗だった。
陽斗は連絡を貰い、出張先から帰って来たのだ。
「陽斗さん、申し訳ございません。全て私の責任です、私が悪いのです。」
陽斗は震える私を抱きしめた。
「澪、君が悪いわけじゃない。雫をあんなに大切にしている君が悪いわけないだろ…これは事故だ。それよりも雫を取り返すことを考えよう。」
すると、少しして警察が急いで何かを伝えにやって来た。
「分かりました!分かったんです、萩原と雫ちゃんの居場所が分かりました。」
私達が一斉に立ち上がると、警察はさらに言葉を続けた。
「彼女の目的は…陽斗さん、あなたのようです。」
陽斗は驚いて目を大きく見開いた。
「なぜ、ぼくが目的なのですか?」
「恐らく、萩原はあなたが好きなのでしょう。だから雫ちゃんと引き換えにあなたに来て欲しいと言っています。」
陽斗は警察に大きな声を出した。
「僕が行けば雫は返して貰えるのですね。すぐに行きましょう。」
「しかし…彼女は何をするか分かりませんよ、かなり危険です。」
陽斗は警察官に掴みかかるように大きな声をあげた。
「僕の命に代えても雫は守ります。萩原の所に連れて行ってください。」