アザミの箱庭 「バリキャリウーマンの私が幼女に転生したので、次は大好きなお兄様を守ります」
リルお姉ちゃん。
リルお姉ちゃん。
待ってよお、リルお姉ちゃん。
やだ、クララもリルお姉ちゃんのがいい。
リルお姉ちゃんの、それ、クララにちょうだい。
やだやだ、リルお姉ちゃんのがいい、やーだー!
あら、リルオードお姉様。
お姉様のそのドレス、可愛いから同じのを仕立てさせましたの。
どう?
似合う?
あら、リルオード。
今夜のパーティなどとっくに終わりましたよ?
え? 明日だと? あたくしが?
言いがかりはおよしになって。
今日だと言ったはずですわ。
確かに。
……
「この度、アルフレッド・エングルフィールド王太子陛下と新たに婚約を結んだのは、あたくし、ウェントワース家のクラリッサでございますわ」
もはや頭の中は真っ白。
妹代わりのこの子が言うことばが、頭に入ってきません。
「昨晩、陛下がそう決めてくださったのです。……あたくしが、そこのリルオード・イングラム公爵嬢から受け続けた、いじめの日々。その告発を聞いてくださってから」
いじめ?
なんてこと。
ひどい。
やっぱりイングラム家はもう終わりだな。
パーティ会場の空気が敵意に満ちていきます。
「まって、クララ。いじめって、なんのこと?」
ばっ。
わたくしが差し出した手を、妹だったその子が払い除けます。
「触らないでくださいまし!」
「クララ……」
「皆様、聞いてくださいまし! このひとは陛下があたくしを好いてらっしゃるのを知ると、あたくしから何もかもをとりあげ、そして言語を絶するような、それはそれはひどい誹謗中傷を──」
がたんっ。
「奥様! 奥様っ!」
クララの声を遮るように、絶叫が響いたと思うと、血相を変えてパーティ会場に駆け込んでくる女性がいます。
わたくしはこの声を知っています。
小さい頃から母様と一緒にわたくしを見ていてくれたお付のレディースメイドの……
「お嬢様っ!」
「どうしたの、セシリー」
「奥様が……ハンナお母様がバルコニーから下へ……っ!」
リルお姉ちゃん。
待ってよお、リルお姉ちゃん。
やだ、クララもリルお姉ちゃんのがいい。
リルお姉ちゃんの、それ、クララにちょうだい。
やだやだ、リルお姉ちゃんのがいい、やーだー!
あら、リルオードお姉様。
お姉様のそのドレス、可愛いから同じのを仕立てさせましたの。
どう?
似合う?
あら、リルオード。
今夜のパーティなどとっくに終わりましたよ?
え? 明日だと? あたくしが?
言いがかりはおよしになって。
今日だと言ったはずですわ。
確かに。
……
「この度、アルフレッド・エングルフィールド王太子陛下と新たに婚約を結んだのは、あたくし、ウェントワース家のクラリッサでございますわ」
もはや頭の中は真っ白。
妹代わりのこの子が言うことばが、頭に入ってきません。
「昨晩、陛下がそう決めてくださったのです。……あたくしが、そこのリルオード・イングラム公爵嬢から受け続けた、いじめの日々。その告発を聞いてくださってから」
いじめ?
なんてこと。
ひどい。
やっぱりイングラム家はもう終わりだな。
パーティ会場の空気が敵意に満ちていきます。
「まって、クララ。いじめって、なんのこと?」
ばっ。
わたくしが差し出した手を、妹だったその子が払い除けます。
「触らないでくださいまし!」
「クララ……」
「皆様、聞いてくださいまし! このひとは陛下があたくしを好いてらっしゃるのを知ると、あたくしから何もかもをとりあげ、そして言語を絶するような、それはそれはひどい誹謗中傷を──」
がたんっ。
「奥様! 奥様っ!」
クララの声を遮るように、絶叫が響いたと思うと、血相を変えてパーティ会場に駆け込んでくる女性がいます。
わたくしはこの声を知っています。
小さい頃から母様と一緒にわたくしを見ていてくれたお付のレディースメイドの……
「お嬢様っ!」
「どうしたの、セシリー」
「奥様が……ハンナお母様がバルコニーから下へ……っ!」