一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「あの、柊二さんの家って、スマホの画面をテレビに映せますか?」
「ああ……あまり使ってないけどリビングのテレビなら機械を繋いであるはずだ。なにか見たいものでも――いや、聞かなくてもわかる。例の魔法少女のアニメを見るつもりだな?」
正解を確信しているかのように、ドヤ顔をする柊二さん。
病院ではあまり見られないおどけた表情に、クスッと笑いがこぼれた。
柊二さんって、こんな顔かわいいもするんだ。
「そうです。……柊二さんさえよければ、一緒に見ませんか?」
「ああ、見る。杏が好きなものは、俺も好きになりたいからな」
そっか……夫婦って、なにも甘い空気を共有するだけじゃない。こうやって相手の好きなものに寄り添って、一番近くでその楽しみを分け合うこともできるんだ。
そう思うと、緊張だらけだと思っていたこれからの生活も、ワクワクしてくる。
「これからは私にも、柊二さんの好きなもの教えてくださいね。今のところ、焼きそばパンしか知らないので」
寝室を出て、廊下を一緒に歩く彼にそうお願いする。
仕事の上で一緒にいる時間は割と長い方だと思うけれど、そういえば彼の趣味について私はあまり知らない。
脳外の先生の中には車好きやワイン好きがいて、たまにそういった趣味の話をしているのも耳にするけれど、柊二さんは仕事の話しかしないイメージだ。