院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~

 忙しい仕事だから仕方がないと思う反面、異性が目の前にいる時くらい自重してほしいと思う。

 一度うっかり着替えシーンを目にしてしまったことがあるけれど、彼の上半身は筋肉隆々で、男性との交際経験が一度もない私には刺激が強すぎたのだ。

「すみません、これからはもう少し早く帰ることにします」

 彼に背を向けたまま、私も白衣を脱ぐ。中はすでに通勤着の半袖ブラウスとスカートだったので、椅子に掛けていたジャケットを羽織れば着替えは完了。

 白衣は専門のクリーニング業者が回収・洗濯してくれるので、更衣室か医局の隅にあるカゴに入れておくだけでいい。

「そうしてくれ。勉強のことならいつでも相談に乗る」

 ポン、と頭の上に大きな手が乗った。顔を上げると、着替えを済ませた千石先生と目が合う。

 なんとなく子ども扱いをされている気がするが、今の私の実力では仕方がない。せっかく実力も人徳もあるのいい千石先生が指導医になってくれているのだから、この際お言葉に甘えてしまおう。

「ありがとうございます。じゃあ、帰りながら色々お話伺ってもいいですか?」
「ああ。俺で役に立てるなら」

< 11 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop