院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~

 杏の健気さは両親にも伝わったようで、彼女が何か話すたび父と母はほっこりした様子で目を見合わせていた。

 だから杏にも心配はいらないと言ったのだ。彼女の真面目な人柄を必ず両親は気に入ってくれると信じていた。

「本当に素敵なお嬢さんじゃないか柊二。杏さんのこと、くれぐれも大切にするんだぞ」
「ああ、わかってる」

 父に向って頷いた直後、母がソファから腰を上げて杏の元へ近づく。

「杏さん、よかったら柊二の小さい頃のアルバム見ない?」
「わぁ、見たいです……!」
「それじゃ、私の部屋へいらっしゃい。見やすいように出してあるから」
「はい、お供します!」

 アルバムか……。俺も、杏の小さな頃の写真があったら是非見たいものだ。

 彼女には双子のお姉さんもいるし、きっと幼少期は姉妹でかわいかったに違いない。

 今度愛花先生に頼んでみるか……。

「……柊二。杏さんのことだが」

 母と杏が別室へと移動するのを見送ると、父がふと静かなトーンで語りだす。

 少し前までの穏やかな表情とは打って変わって、眉間にしわが寄っている。

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