院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~

 真実を確かめたいのなら、あの書類を本人に見せてその反応を見ればいい。わかっているのに、そうする勇気が出ない。

 考えてみれば、杏の気持ちが俺に向いている確証はなにひとつとしてないのだ。

 コスプレの趣味を小田切院長や愛花先生に暴露されたくないがために、ただ俺の言いなりになっているだけ。だから、キスまでは許せてもその先は抵抗がある……。

 できることなら否定したいのに、考えれば考えるほど父に見せられた写真の人物が杏であるという結論に向かってしまう。

 シャワーを浴びても全くスッキリせず、満足に髪も拭かないまま幽霊のような顔でリビングに戻る。

 キッチンでなにかしていた杏が、そんな俺を見て慌てて駆け寄ってきた。

「ダメですよ柊二さん、疲れているからって濡れたままでは風邪を引きます。ソファに行きましょう」

 杏の小さな手に引っ張られ、俺はソファに座らされる。彼女は一旦部屋を出て行き、その手にドライヤーを持って戻ってきた。

 そして俺の背後に立ち、軽くタオルで髪の水気を取ってから髪を乾かし始めた。

 初めてのシチュエーションに面喰らって、されるがままドライヤーの風を受ける。

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