一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「きみも飲んでみるといい。……とても甘くて、人を狂わせる味だ」
「えっ? 私は大丈夫――んっ」
杏が言い終わる前に、素早くミルクを口に含んでカップをテーブルに置く。そのまま彼女の口をキスで塞ぎ、小さく開いた唇の隙間から口の中の甘い液体を注ぎ込んだ。
「んっ、ぅ、ふぁっ」
突然のことに準備ができているはずもない杏の口の端から、つう、とミルクがこぼれる。
俺はそれを丁寧に舐めとり、彼女の舌に絡ませるようにして無理やり味わわせる。
逃げられないように両手で彼女の頭を掴み、ミルクの味がしなくなってもなお、嫉妬をぶつけるように激しいキスを繰り返す。
「しゅうじ、さ……っ」
「本当は慣れているんじゃないのか? こうして男を誘惑すること……」
「なに、言って……? 誘惑なんて、わたし……」
「違うと言うなら確かめさせてくれ。俺以外、誰にもこの体に触れさせていないと」
俺は杏の首筋に吸い付き、彼女の背中にあるワンピースのファスナーに手を掛ける。
ジジッ……とファスナーが下ろされる音に気づいた杏が、俺の胸のあたりの服を掴んだ。
「柊二さん、やめて……っ」
「どうして。……本当は、俺と結婚したくないからか?」
聞くのが恐ろしくて胸に閉じ込めていた問いが、勝手に喉の奥から押し出された。
杏の潤んだ瞳に移る俺は、怯えたような目をしている。