一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「えっ……?」
その反応は、戸惑いなのか焦りなのか。自分で聞いておきながら杏に決定的なひと言を告げられたくなくて、俺は彼女から目をそらした。
「……ごめん。また、怖がらせたな」
いつまででも待つと、大切にしたいと言ったのに。その約束を守れない自分に嫌気がさして、俺は杏の体をそっと起こしてソファから下りた。
彼女の方を見ないまま、淡々と告げる。
「病院で頭を冷やして来る。明日の勤務時間までには冷静になっておくつもりだ」
「病院? それじゃ、余計にお疲れが取れないんじゃ……」
こんな時まで俺の体調を気遣うのはやめてくれ。
それが純粋な優しさなのか、それとも俺を惑わせようとしているのか、今は判断がつかないから――。
「きみはお人好しが過ぎる。俺のことは放っておいてくれ」
「柊二さん……」
「落ち着いたら、ちゃんと話し合おう。これからのこと」
それだけ言い残し、俺はリビングダイニングを後にする。