一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
『――あきらめちゃダメよ!』
その時頭の中に突如響いたのは、私の推しで生き甲斐で、神のように崇拝してやまないオトメの声。
目を閉じると、まぶたの裏に浮かんだ彼女は私を励ますようにウインクしてくれた。
「ときめくココロが世界を救う……」
もはや遺伝子レベルで刷り込まれている、オトメの決め台詞が口からこぼれた。
そっか。こんな時オトメなら……簡単にあきらめたりしない。心が折れそうな状況でも、勇気をもって壁に立ち向かっていく。
柊二さんが今どんな気持ちでいるか、彼の口からハッキリきいたわけでもないのに、自分の中だけで後ろ向きに考えるのは一度やめてみよう。
たとえこの恋が成就する確率は低くても、柊二さんにもらった初めての大切な気持ちを伝えないまま終わったら、きっと後悔する。
オトメはそう伝えてくれようとしたんだ。
……ありがとう、オトメ。私、頑張ってみる。
きゅっと唇を引き締めた私は、冷たい水で顔を洗うと、気合を入れてメイクを始めた。