院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~
「その侵入者に、ま、魔法を……かけられたんだ」
「まほう……?」
一瞬あっけにとられたが、すぐに背筋が冷たくなった。
それってまさか――。
一カ月前の出来事がフラッシュバックし、全身をダラダラと冷や汗が伝う。
彼の言う不法侵入者に心当たりがありすぎる……。
まさか千石先生、あれが私だって気づいてないよね?
双子の姉以外誰も知らない、私の秘密の趣味……。
「まま魔法なんて、そんな非科学的なこと、あるわけないじゃないですか……っ」
「それくらい俺もわかっているし、あれは夢だったんだろうと何度も自分に言い聞かせた。でも、ハッキリと記憶に残っているんだ。あの時目の前にいた、天使のように愛らしい魔法少女の姿が」
て、天使……!?
いつでも冷静沈着、どんな難しいオペも涼しい顔でこなす千石先生の言葉とは思えない。
驚愕して口をパクパクさせる私に、千石先生はますます恥ずかしそうな表情になる。
「だから脳外の皆に、同じ人を見ていないかと聞いて回っているところなんだ。今のところ誰も知らないから、やっぱり俺の見間違いか夢だったのかもしれない」
苦笑する千石先生は、少し寂しそうだ。
彼が一カ月前に見た魔法少女の姿は夢でも幻でもない。そのことは私が一番よく知っているが、打ち明けるわけにもいかないのでただただ気まずい。