一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
自分の未熟さが歯痒く、悔しくてたまらない。だけど……立ち止まっている暇はない。
柊二さんが私に足手まといだと言ったのは、別に悪意からではない。目の前の患者を助けるために、事実として邪魔だったのだ。
だったら、そうならないように成長すればいいだけだ。簡単ではなくても、一歩一歩経験を重ねて、彼や母に認められる医者になれるように。
深呼吸をして、止まっていた足を前に進める。医者を必要としている患者は竜星くんだけではないのだ。私は私にできること精一杯やらなくては――。
竜星くんの手術が終わり、彼がICUに運ばれてきたのは明け方近かった。
仕事は終わっていたものの、一睡もできずに手術終了を待っていた私は、柊二さんと母が医局に戻って来るやいなや、ふたりに駆け寄る。
「あの、竜星くんのオペは……?」
「とりあえず一命はとりとめた。ナイダスの摘出もうまくいったが、しばらくICUで注意深く経過を見る必要があるだろう。合併症が起きないといいんだが」