一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
ICU病棟を出て、脳神経外科の医局に戻る途中。静かな廊下で私はふいに足を止める。
柊二さんが不思議そうに少し先で立ち止まり、こちらを振り向いた。その目を真っすぐに見つめ、私は大きく息を吸った。
「――好きです」
自分の声だけ、やけに大きくあたりに響いた気がした。柊二さんが大きく目を見開いて、戸惑ったように瞬きする。
「柊二さんのことが好きなんです。だから、これからもずっと一緒にいさせてください」
心臓が破裂しそうに痛かったけれど、私は勇気を振り絞って言葉を重ねた。
柊二さんは辺りをうかがい、誰もいないことがわかるとゆっくり歩み寄ってくる。
全速力で走った後のように鼓動が速まり、緊張から全身に汗が滲む。
振られる覚悟までした上で告白したつもりだったけれど、彼がどんな返事を口にするのか考えると怖くて逃げたくなった。
でも、自分で決めたことだから後悔はない――。
「ちょっと……待ってくれ。きみが好きなのは、あの患者の男性じゃないのか? 光本……竜星くんとか言ったか」
「えっ?」
イエスでもノーでもなく、予想もつかなかった疑問を投げかけられ、一瞬ぽかんとしてしまう。
どうして柊二さんはそんな誤解を?