一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する

「ち、違います。竜星くんは姉の彼氏です」
「姉? しかし、さっきICUできみと親密そうな会話を」
「あれは……」

 そうか。あの時柊二さんは私たちの会話を聞いていたのだ。

 凪のフリをした私の言葉は、確かに恋人同士のそれに聞こえたかもしれない。

「竜星くん、手術直後でまだ少し混乱していて、私のことを姉だと誤認していたようなんです。発作を起こした時のことを思い出して怖がる様子もあったので、どうにか安心させたくて、そのまま姉のフリをして会話を」
「じゃあ、ショック受けているように見えたのは、単にお姉さんの恋人である彼を心配する気持ちからだったのか。俺はてっきり……」

 柊二さんは大きな手で口元を押さえ、難しい顔で黙り込む。

 懸命に事実関係を整理しているようだ。……私が告白したこと、忘れていないよね?

「きみの気持ちに答える前に、見せたい写真がある」
「写真?」
「今となってはなんとなくカラクリがわかるような気もするが……一応確かめておきたい」

 柊二さんはそう言うと、くるりと踵を返して再び医局の方へと歩いていく。

 私は戸惑いながらも慌ててその背中を追った。

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