院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~
彼女はその言葉にすらぴくんと体を震わせ、困り果てたような涙目で俺を見る。
肯定しているとしか思えないその反応に、体の奥から湧き上がる欲求があった。
彼女の頬に手を添え、その瞳をジッと覗く。
「杏。俺のこと、まだ怖いか?」
彼女は即座に首を左右に振った。
「柊二さんのことを怖いと思ったことは一度もありません。私……あなたに嫌われるのが怖かっただけなんです」
「杏……」
「だから、その……今なら、覚悟はできています」
杏の瞳は相変わらず潤んでいたが、これまでのように頼りなく揺れているわけではなかった。
俺にすべてを捧げる準備はできている。そう宣言するように、澄み切った色をしていた。
たまらず彼女の唇をキスで塞いで、俺も同じ気持ちだと無言で訴える。
杏も抵抗せず、体の力を抜いて俺のキスに応えた。
しかし、彼女は俺が初めての相手だ。焦って乱暴に事を進めるようなことはしたくない。
俺は長い口づけを終え、至近距離で視線を合わせた彼女に伝える。
「先にシャワーを浴びたら俺の部屋で待ってて。俺もすぐにシャワー済ませるから」
「はい……あの」
「うん?」
「や、やっぱりなんでもありません……っ。シャワー、浴びてきます!」