一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「どうしたんだこれ。自分で買ったのか?」
「ち、違います! 少し前に姉に押しつけられたんです。姉の勤め先がその商品の製造元なので」
「あ、ああ……なるほど」
杏が俺と迎える初夜のために恥を忍んで買っていたとしたら、それもそれで悪くないというかむしろ嬉しかったが、杏が自発的に用意したわけではなくお姉さんの仕業だったらしい。
「捨てようかとも思ったんですけど、いつかこういう時がきたら使うかもしれないと取っておいたんです。……それで、実際のところどうなんでしょう?」
杏が場違いに真剣な顔で俺の顔を覗き込む。
俺も真面目に答えるなら、スムーズに体を重ねるためには役立ってくれる商品だと思う。とくに杏は初めてなので、十分に体の準備が整うとも限らない。
医者という立場から考えても苦痛を感じさせないためにできることはしてやりたいが……。
「これが必要かどうかは、杏の体に聞いてみないとわからない」
「えっ?」
キョトンとする彼女は、本当になにも知らないようだ。これはますます責任重大だなと思う反面、なにもかも俺が教えてやれるのだと思う優越感に、欲情が煽られる。
俺は一旦チューブをベッドサイドのテーブルに置くと、杏のパジャマのボタンに手を伸ばす。「あのっ」と焦った声を出す杏だが、抵抗はしなかった。