一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「杏。俺に初めてコスプレ姿を見られたあの夜のこと、覚えているだろ?」
「は、はい。できれば忘れていただきたい記憶ですけど」
今この瞬間裸で見つめ合っていると言うのに、あの過去の方がより恥ずべき出来事であるかのように、頬を赤らめる杏。
彼女には悪いが、俺は当時の記憶も感情も、一生忘れるつもりはない。
「忘れられるわけないだろ。俺はあの夜、本当に魔法にかけられてしまったんだから」
「えっ?」
怪訝な顔をする杏に微笑みを返し、俺は握った彼女の手を持ち上げて自分の胸にあてた。
初めて体を重ねる大切な瞬間を待ち望んで高鳴る胸が、激しく上下している。
「次に目覚めた時、ハートが熱くなっている……だったか? 目覚めるどころかあの直後から、その通りのことが起きた。きみを想うといつも冷静ではいられなくなった」
オトメの時の話を出したからといって、決してふざけているわけじゃない。
俺は本気であの夜恋に落ちたんだ。それこそ魔法にかけられたように、急速に彼女に惹かれた。
「柊二さん……」
持ち上げていた手を下ろし、静かに杏を見つめる。杏もまた愛おし気に俺を見つめていて、言葉がなくてもお互いの気持ちがぴたりと重なり合うのがわかった。
「愛してるよ、杏。俺のすべてを……きみに捧げる」