院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~

「そういえば千石先生、ちょっと前までは杏、私がこの服を着ると烈火のごとく怒ったんです。でも、今日はすんなり貸してくれた。どうしてかわかりますか?」

 そういえば、父が手配した調査報告書の中で凪さんが衣装をまとった写真を見た時、杏はかなり目の色を変えていた。

 それほど、杏にとってオトメの衣装は特別なのだ。

 俺もそれは知っていたため、杏が凪さんにすんなり衣装を貸したとなると、少し不可解ではある。

「まだ完全に回復したとはいえない恋人のため、コスプレをして喜ばせようとする凪さんの気持ちに共感した……とか?」
「それもないとは言いませんが、私はそれより、杏の一番の推しがオトメじゃなくて千石先生に変わった証拠だと思います! 最近の杏、すっごく綺麗になったって姉から見ても思いますから」
「そ、そうですか……」

 仕事中というのもあり派手に食いつくわけにはいかないが、これまでずっと杏のそばにいた凪さんから彼女が綺麗になったという評価はうれしかった。

 俺に愛されてから変わったのだと言われたようなものだから。

 とはいえ、元々彼女は誰よりかわいかったし魅力的だったが。

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