院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~
「格式のある家だからって遠慮してたけど、彼もご両親も私が思うほどアニメやコスプレに偏見はなかったみたい。だから、もう我慢しなくていいの」
「また一緒にイベントに行けるってこと?」
「うん!」
きゃあきゃあと興奮したような悲鳴を上げて、ふたりがはしゃいでいる。
兄はそんな彼らをニコニコ微笑ましそうに眺めているが、俺は李子さんに少し嫉妬した。
「イベントへ行くのはいいが、その間俺は放っておかれるのか?」
少々拗ねたような口調で尋ねると、杏は少し考えてから名案を思いついたように瞳を輝かせた。
「だったら柊二さんも一緒に行きますか? ヒトリミーノの格好をして」
「あっ。確かに似合うかも。慶一さんとも似ているけど、ちょっと悪役っぽさある~」
杏と李子さんの視線が一気に集まり、どんな反応をしたらいいのかわからない。
気まずく思っていると、兄がポンと俺の肩に手を置いた。
「やぶへびだったな、ヒトリミーノ」
「……そ、その名前で呼ばないでくれ」
趣味を同じくする友との再会に盛り上がった女性陣は、言うまでもなく食事の間中、俺と兄に熱心な布教活動をするのだった。