一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
エピローグ
魔法少女のコスプレに身を包むのも、魔法をかける演技もお手の物。
そんな私がまさか、魔法をかけられる側になるなんて――。
「よく似合ってる。こんなに綺麗な花嫁を見たのは初めてだ」
私の姿を見た柊二さんが、蕩けるような甘い目をして私のドレス姿を褒めた。
「あ、ありがとうございます。でもあの、状況がいまいち呑み込めないのですが」
彼と結婚の約束をしてから一年半。
小田切家と千石家を巻き込んでの結婚準備は思った以上に大掛かりで、仕事で忙しい私と柊二さんはほとんどノータッチ……と、思いきや、柊二さんは密かに秘密の計画を進めていたらしい。
近日国内で大々的に結婚式と披露宴を行うのとは別に、今日はふたりだけの海外挙式を用意してくれていたのだ。
インドネシアのバリ島、そのビーチリゾートの高級ホテルで式を挙げるとは聞かされていたものの、まさか移動手段が千石家のプライベートジェットで、機内に待機していたプロのスタッフにヘアメイクを施され、そこでドレスまで着せられるなんて予想できるはずがない。
完璧な花嫁姿になった今でさえ、狐につままれたような気分だ。
『きみに魔法をかけてやる』
飛行機に搭乗する前、柊二さんは私をエスコートするように手を差し伸べながら、確かにそう言っていたけれど。