院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~

「あーあ、あの衣装で一回盛り上がっちゃったのいけないよね~」

 盛り上がる……というのは、つまり、男女の……そういうことだよね?

 先ほどの話と合わせるとなんとなく察しがつくものの、凪の発言を信じたくなくておそるおそる尋ねる。

「あのさ、凪。さっきからうっすら気になってたけど、もしかして凪、『魔法少女オトメ』の衣装を貸したあの夜、竜星くんと……?」
「あれっ? 言ってなかったっけ。ごめん、新歓の後でお互い酔ってたしさ~」

 なんでもないことのように、凪がへらりと笑う。直後に電子レンジの温め終了を知らせるメロディが聞こえたが、無視して凪を睨みつけた。

「信じられない! 人が大切にしている神聖な衣装を、そんなイカガワシイことに使うなんて! 私はあくまで、新歓の出し物で使うって言うから貸したのに……!」
「ごめんって。汚さないように気をつけたし、ちゃんとクリーニングに出してから返したんだから許してよ」
「許せるわけないじゃない……! もう二度と貸さないからね! 竜星くんにもよく言っておいて!」

 わなわな震えながら凪を怒鳴りつけ、レンジから出した定食と箸を持ってリビングダイニングを出て行く。

 自室の扉をばたんと閉めると、そこに背を預けて怒りを落ち着かせるように深呼吸した。

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