院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~

 久しぶりに大声を出してしまった。

 だって、魔法少女オトメは私の推しで生き甲斐で、もっと言えば神様みたいな信仰対象なんだもの。

 どんなに忙しくてもオトメのイベントのためなら時間を捻出するし、凪に貸したコスプレ衣装を含め、コレクションしたグッズや円盤は膨大な数になっている。

 しかし、これまで一度も恋人がいなかったうえ趣味が子ども時代に見ていた魔法少女のアニメだなんて言ったら、きっと両親に心配をかけてしまう。

 だから、部屋の収納に隠し切れないオトメグッズは屋内型のトランクルームに預け、両親の前では無趣味を装っている。秘密を知っているのは、凪と竜星くんだけだ。

 手元に円盤がなくても、今はスマホがあれば色々見れるしね……。

 部屋の中央にある小さなローテーブルに食事を置くと、同じくテーブルの上にあるスマホスタンドに、横向きにしてスマホをセットした。

 起動したのは、動画配信アプリ。中でもとくにアニメを多く配信しているサービスに登録していて、勉強の傍ら流したり、休みの日に集中して鑑賞したりする。

 私が子どもの頃にテレビで放送していた『魔法少女オトメ』シリーズもすべて網羅されており、元気を出したい時には第一シリーズの最終回を見るのが恒例だ。

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