一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「私、なんでもします……。千石先生が望むことなら、なんでも」
極限状態に陥った私は、縋るように訴える。
本物の魔法少女なら彼の記憶を消すこともできるのだろう。
しかし私に使えるのは、現実的な手段で精一杯彼に尽くすことだけだ。
「だから、お願いです。両親には言わないでください……」
召使い、下僕、いえいっそ、奴隷になります。
なにを申しつけられても必ずお応えしますから、どうか私の秘密をお守りください。
「……わかったよ。ご両親には秘密にする」
「ありがとうございますっ!」
「ただし、交換条件だ。俺と結婚してほしい」
やかましい蝉の声をものともせず、凛とした彼の声が耳に届く。
私を見つめる彼の目に、ふざけた様子など少しもなかった。
ただの指導医と専攻医だった私たちの関係は、その日から少しずつ形を変えた。
時に甘く、時に切ない恋の魔法は、確実に私たちに降りかかっていたのだ――。