院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~

 ローテーブルで背中を丸めて食事をしながら、スマホの小さな画面に釘付けになる。

「はぁ……尊い」

 このように私の恋愛のお手本は乙女と勇気くんの関係なので、凪にリアルな話をされると本当に困ってしまう。

 学生の頃もそういう話をする友達がいなかったわけではないが、生々しさに引いてしまってあまりまともに聞けなかったのだ。

 でもそれを凪に言うと、『頭蓋骨削って脳みそ手術する方がよっぽど生々しくて怖いよ』と取り合ってもらえない。

 双子の姉妹とはいえ、わかりあえない部分はあるのだ。

 その時、画面上部にメッセージの通知が現れる。凪からだ。

【衣装の件、本当にごめんね。部屋の外にお詫びの品置いておく】

 お詫びの品……?

 ドアの方でかすかな物音がした後、凪が自分の部屋に戻っていく足音が聞こえた。

 姉妹でわかり合えない部分はあれど、悪いと思ったらすぐに謝れるのが凪のいいところだ。

 どちらかというと私は意地を張ってしまうタイプだが、素直で裏表のない凪のおかげでケンカをしてもそれほど派手にならず、長引くこともない。

 今回もすぐに謝ってくれたし、お詫びの品まで用意してもらったら許さないわけにもいかないか……。

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