一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する

 立ち上がって部屋のドアを開けると、足元でコロンと小さなものが転がった。

 ハンドクリームか歯磨き粉か、というサイズの真っ赤なチューブだ。

 手に取って側面に印刷された文字を読む。

「火照り成分配合、潤々(うるうる)ホット……熱い夜を演出する潤滑ゼリー」

 ……なにこれ?

 ふたをあけてチューブを押すと、透明なゼリーがにゅっと出てくる。指に少しだけのせてみた感触は、病院で超音波検査をする時に使うエコーゼリーによく似ていた。

 よくわからないまま室内に戻ると、凪から追加のメッセージが届いていた。

【うちの人気商品『潤々シリーズ』の新作だよ♡ いざという時が来たら使ってね!】

 コバルト製薬の新商品ってこと……?

 用途がわからないのに、いざという時もなにもないんだけど……。

 仕方なく、スマホの検索アプリに潤々シリーズと打ち込んでみる。

 画面のトップに現れたのはコバルト製薬の公式サイトではなく、【ラブグッズ専門店】という妖しげなサイトだった。

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