一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
ラブ……恋愛?
なんとなくいやな予感を抱きつつもリンクの文字をタップすると、【あなたは十八歳以上ですか?】という確認のバナーが現れ、ようやく私は凪の意図と潤滑ゼリーなるものの役割を理解した。
熱い夜ってそういうこと……。余計なお世話もいいところだ。
「これのどこがお詫びの品なの…!」
思わずひとりごち、衝動的にチューブをゴミ箱に投げつける。が、狙いがうまく定まらず、華麗に宙を舞ったそれは、ゴミ箱の端にぶつかって床に落ちた。
ああもう……!
イラッとしながらもう一度忌々しいチューブをゴミ箱に入れ直そうとして、ぴたりと動きを止める。
こんなもの私には必要ないと思う反面、このまま一生必要なかったらどうしようという焦燥にかられた。
今は脳外科医になることで頭がいっぱいだし、趣味だって充実しているから不満も不自由も感じていないけれど、この先もずっとひとりで生きていくのだと思うと、少し寂しくなる。
両親の夫婦仲はいいし、私と凪にもたっぷり愛情を注いで育ててくれた。
だから、自分で新たな家庭を作るということに漠然とした憧れはあるのだ。