一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する

 誰かと夫婦になって、子どもを授かる。だけどそれにはやっぱり、原始的な行為が必要なわけで……。

 理想と現実とのギャップにため息をつき、手の中にあるチューブを見つめる。

「お守り……くらいにはなるかな」

 凪だって、嫌がらせで渡したわけではないだろう。お節介だけど、彼女なりに妹を心配しているのだ。

 仕事用のバッグを開け、数少ないメイク道具が入ったポーチに小さなチューブを忍ばせる。

 こういう形の化粧品は山ほどあるし、ぱっと見で変に思われることはないはず。

 ……そんなことより〝変に思われる〟可能性が高いのは一カ月前の件だ。

『ハッキリと記憶に残っているんだ……あの時目の前にいた、天使のように愛らしい魔法少女の姿が』

 千石先生、明らかにあの夜のことを覚えているようだった。

 なんであんなに照れていたのかは謎だけど、とにかくごまかし続けるしかないよね……。

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