一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
更衣室に寄る数分さえ惜しかった私は、デスクの陰に隠れてゴソゴソと衣装をバッグから取り出す。
しゃがんだ状態で、しかも物音を立てないように着替えるのになかなか難儀したが、無事に魔法少女オトメに変身することができた。
ちらっと千石先生の様子をうかがうと、自分の腕を枕にして寝入ったポーズのまま、ぴくりとも動かない。
ここまで熟睡してるなら……もう少し派手に動いても平気かな。
着ていた服をバッグにしまい、続けて中から取りだしたのは、髪をまとめるネットとウィッグ、そして、普段使いのものとは別にある、コスプレ用のメイクポーチだ。
デスクに鏡を置き、まずはオトメのメイクをする。
元々私の目はタヌキっぽい垂れ目だが、オトメのようにきりりとした顔立ちにするため、濃いめにアイラインを引いて目尻を吊り上げる。
眉毛はウィッグに合わせたピンク色。普段は茶系のストレートヘアを下ろしているオトメだが、変身後はピンク色の髪を耳の上でツインテールにした髪型になるのだ。
マスカラやチーク、リップもそれぞれオトメ風に仕上げると、最後に赤のカラーコンタクトを入れる。