院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~
それなのに、今でも同僚に聞いて回るくらい気にしていたなんて……。
二度と彼の前であの格好をしなければ、いつか忘れてくれるだろうか。
窓辺にある自室のデスクに歩み寄り、卓上カレンダーを現在の七月から八月にめくった。
花丸がしてある八月十日、私はまたあの衣装に身を包む予定がある。
同じく魔法少女オトメのファンである友人と、名古屋のコラボカフェに出かける約束をしているのだ。
コラボカフェ自体は今月から開催されているが、友人も私も日々仕事が忙しいためその日でないと予定が合わせられず、満を持して予約した。
カフェを楽しんだ後は〝オトメの聖地〟と呼ばれる神社に寄る約束もしていて、そこでの記念撮影のためにコスプレ衣装を持っていく。
聖地でのコスプレ写真撮影は公式も容認しており、また神社の方も知名度と集客力がアップするからと、私のようなオタクたちを歓迎してくれている。
境内に更衣室まで用意してくれていて、ありがたい限りである。
オトメのコスプレをするのは千石先生に見られたあの日以来だが、さすがに名古屋で彼に会うことはないだろう。
彼もそのうち忘れてくれると信じよう……。
今は来月のイベント遠征を糧に、日々の仕事をこれまで以上に頑張る。私にできることはそれくらいだ。
気合いを入れてカレンダーを七月に戻すと、動画が流れ続けているテーブルに戻って、食べかけだった食事に再び箸をつけた。