一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
指導医千石柊二の苦悩
俺は頭がどうかしているのだと思う。
職場で指導に当たっている後輩医師がいくら努力家でけなげでかわいくて女性としても魅力的だからといって、夜な夜な彼女がコスプレをした姿を夢に見るなんて。
初めて彼女が夢に出演したのは、忘れるはずもない一カ月前のこと。
医局でついうたた寝をしていた時に、ピンク色の魔法少女は突如俺の前に現れた。
見慣れた医局の景色の中で、彼女の存在だけが異質だった。
『誰だ……?』
俺の声に反応した彼女がこちらを向く。なぜか瞳の色が赤いが、杏先生……に見えた。
彼女は頭の左右でふたつに結ったピンク色の髪を触覚のようにぴょこぴょこと揺らしながら、妖精のような軽やかな動きでこちらに近づいてくる。
背丈や顔の雰囲気は完全に杏先生だが、瞳の色だけでなく、髪の色や服装、キャラクターまでもがいつもの彼女とは違うようだ。
俺は混乱して目を瞬かせた。