一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
『まま魔法なんて、そんな非科学的なこと、あるわけないじゃないですか……っ』
予想していた反応とはいえ、落胆する。手がかりを得られなかっただけでなく、なんて馬鹿な男だろうと思われたに違いない。
『それくらい俺もわかっているし、あれは夢だったんだろうと何度も自分に言い聞かせた。でも、ハッキリと記憶に残っているんだ……あの時目の前にいた、天使のように愛らしい魔法少女の姿が』
杏先生は頬を赤らめ、金魚のように口をパクパクさせていた。
指導医のガラにもない発言に衝撃を受けているようだ。
これまで、俺のプライベートな感情を話すことなどなかったからな……。
『変な話をして悪かった。忘れてくれ』
『いえ……お役に立てなくてすみません』
どんなに熱弁しようとも、本人に否定されてはどうしようもない。しかし、あれが夢だったのなら、夢に見るほど俺は彼女に惹かれているということだ。
このまま指導医の立場を貫き続けるか、それとも一歩踏み出してみるか。
魔法少女の件は一旦置いておき、胸の中で成長を続ける杏先生への特別な感情と冷静に向き合う必要があるだろう。
この気持ちが本物なら、俺は――。