一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
専攻医小田切杏の焦燥
八月十日。私は予定通り名古屋を訪れ、現地で落ち合った友人・スモモ氏と市内のコラボカフェへと向かった。
スモモ氏とは魔法少女オトメのSNSサークルを通じて知り合い、推しているキャラこそ違うものの、作品の魅力や萌えポイントに関しては意見がおもしろいほど合ったため、親しくなった。
いわゆる解釈一致!というやつである。
私はハンドルネームを考えるのが面倒で、本名をカタカナにした『アンズ』という名を使っており、同じバラ科で見た目もそっくりのフルーツを名乗るスモモ氏とはそんなところでも共通点があってますます意気投合。今ではお互いを『スモモ氏』『アンズ氏』と、オタク特有のノリ全開で呼び合っている。
本名や年齢が不明でもリアルの友達よりずっと仲良くなれるのが、推し活のすごいところ。
ちなみにスモモ氏の推しはオトメの親友『コマチ』で、おっとりしていて誰より優しい彼女の性格が、スモモ氏とは真逆で憧れるそうだ。
お互いの推しキャラについて熱っぽく語っているうちにコラボカフェの入っているビルにたどり着き、待機列に並ぶ。
入り口にはキャラたちの等身大パネルが飾ってあり、スモモ氏と一緒になって何枚も写真を撮った。