一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
ようやく中に通されテーブル席でスモモ氏と向き合うと、彼女がふと神妙な顔になった。
「……アンズ氏、ちょっとリアルな話をしてもいい?」
「ど、どうしたの? なにか悩み?」
スモモ氏がこんなに深刻なムードを纏っているのは初めてだ。
私としては、オトメとコマチにも負けないほどの友情を彼女に感じていたため、リアルな相談でも遠慮なく言ってもらえた方がうれしい。
「その……実は、結婚することになったんだけど」
「えっ!? すごい! おめでとうスモモ氏~!」
なんとなくネガティブな話題かと想像していたが、おめでたい話で安心する。
しかし、両手を叩いて拍手をする私に対し、スモモ氏の表情は冴えない。
「だから、この推し活を……今日で最後にしようと思ってて」
俯きがちに語るスモモ氏は、寂しそうに笑っていた。
推し活は今やその対象が何であれ社会現象となっているが、誰にでも受け入れてもらえるとは限らない。
私もそれを恐れているから、両親には内緒にしているのだ。