院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~
「きみは、あの時の……」
千石先生が鋭い目をして私をジッと見ている。今すぐ逃げ出したいのに、足が動かない。
誰か助けて……。
そんな私の心の声をキャッチしたかのように、スモモ氏が駆け寄ってきた。
私と千石先生の顔を見比べ、不思議そうに首を傾げる。そして――。
「アンズ氏、知り合い?」
彼女は決定的なひと言を放ってしまう。
こんなことなら、もっと凝ったハンドルネームにするべきだった……。
今さらそんな後悔をしても、もう遅い。私はギュッと目を閉じ、覚悟を決める。
「職場でお世話になっている……先輩、です」
再び目を開いた私は、スモモ氏に彼との関係を告げる。千石先生は納得したように大きく頷いた。
「やっぱり、きみは杏先生だったんだな。ずっとそうなんじゃないかと思っていた」
ああ、バレた……。終わった……。
しかも今の口ぶりだと、前から私だと疑っていたようだ。
『夢の中でオトメに会えるなんて、あなたはラッキー☆ 次に目覚めた時、きっとハートが熱くなっているよ♪ でも、オトメに会ったことは誰にも内緒。や・く・そ・く・ね♡』
あの適当な魔法をかけた時から、アイツ何やってるんだ?って、思われていたんだ。
人生最大の恥だ。汚点だ。黒歴史だ。