一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「私はまだまだ仕事も半人前ですし、見た目も……千石先生の隣に並んだら兄妹かなにかと間違われそうです。それに、さっきも言いましたが私には男性経験がないので、妻っぽい振舞いなんてできる気がしません。他の女性に声をかけられた方がいいのでは?」
「仕事はこれから結果を残せばいい。それにきみに経験がないことなんて当人以外にはあまり関係のないことだろ。むしろ、専攻医と指導医の間に恋愛感情が生まれるというのはなかなか自然で説得力があると思わないか?」
「そ、そうですかね……」
オトメと勇気くんの恋愛がお手本の私には、よくわからない。
曖昧に首を傾げていると、千石先生が続ける。
「あと、体格のことを気にするのはナンセンスだ。きみのように小さいからって魅力がないなんてことにはならない。愛らしいと思う男だって……いるはずだ」
最後の発言の時だけ、彼はふいっと私から目を逸らした。
たぶん、私のことを〝愛らしい〟と言っているわけじゃなく、一般論だぞ、と言いたいのだろう。
私だって、さすがに千石先生のような大人の男性に褒めてもらえるだなんて思っていない。ただ、背が低いことについて気にする必要はないようだ。