一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
細かいところは違うものの、千石先生のくいっと上がった口角はまさにヒトリミーノ。
見れば見るほど、千石先生が彼に似ている気がしてきた。
鼻息を荒くして彼に詰め寄ると、最初こそ引き気味だった千石先生はこらえ切れなくなったように噴き出した。
「そんなキャラクター知らないし興味もない。……と、言いきれないネーミングだな。なんなんなんだ、ヒトリミーノって」
興味を示す発言にますますうれしくなってしまう。
推しについて必要以上に語ってしまうのはオタクの悪い癖だとよく知っているものの、頼まれてもいないヒトリミーノの説明が勝手に口からスラスラと出てくる。
「敵ポジションとはいえアニメではイケメンに描かれているので、ついつい惹かれてしまうキャラなんですよね。愛や恋を信じていないキャラとしてオトメとは対立する立場なのに、戦いの中でオトメに歪んだ恋情を抱くようになって、オトメの幼馴染勇気くんとの仲を引き裂こうと画策するんです。でもふたりの純粋な愛にはとうてい勝てず、最終的に自滅。その哀れな役回りにもぎゅんと胸を鷲掴みにされるファンが続出で、私もその回は特に気に入ってて……!」