一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する

 そういえば、今日の母はお祖父ちゃんの手術に付き添うとか言っていたっけ。

 つまり、千石先生がここにいたのは偶然だったんだ。運が悪すぎる……。

「愛花先生には感謝してるよ。有意義な学会に参加させてもらえただけでなく、ずっと気になっていた魔法少女の正体を知ることができて」
「は、母には絶対に言わないでくださいね。もちろん父にも」
「ああ、秘密は守る。それじゃまた病院で。気をつけて帰れよ」
「はい。千石先生もお気をつけて……」

 遠ざかる広い背中を見送り、はぁっと息をつく。

 なんだか、暑さにやられて長い白昼夢を見ていたみたいだ。私、本当に千石先生と結婚するのだろうか。

 男の人とふたりで暮らすのがどんな感じなのか、まったく想像がつかない……。

 ふわふわと思考が覚束ない中、私も帰るためにとりあえず着替えなくてはと、ひとりで更衣室へ向かった。


 名古屋から帰ってきた夜。千石先生との交換条件の話はひとりで考えていても埒があかないのは確実なので、思い切って凪に打ち明けることにした。

 お土産のういろうを一緒に食べようと私の部屋に呼び、お茶を入れて凪と向き合う。

 緊張気味に話を切り出すと、凪はすぐに目の色を変えてテーブルに身を乗り出した。

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