一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「……つまり、指導医の先生にコスプレ姿を見られて、結婚しないと親に秘密をばらすぞって脅されてるってこと?」
「いや、だいぶニュアンス違うってば。なんていうか……契約結婚みたいな?」
千石先生の名誉のために、決して脅されたわけではないと強調する。
もちろん、なんの条件もなく秘密を守ってくれれば私にとっては楽な展開だ。
でも、日頃からお世話になっている千石先生が困っているなら、力になりたいという気持ちは本物だ。まさか、交換条件が結婚とは予想外だったけれど。
「契約結婚か……。そう考えると、うちの両親みたいでちょっとときめくね」
「えっ? お父さんとお母さんってそういう感じだっけ? 単なる職場結婚だと思ってた」
「違うよ~。家族から結婚をせがまれてたお母さんと、病院でモテモテすぎて困ってたお父さんの、利害一致の契約結婚から始まったんだよ。でも、先に惚れちゃったお父さんが熱心にお母さんを口説いてラブラブ夫婦になったんだって」
両手で頬杖を突いた凪は、うっとりとした目で語った。
「へえ……」
こんなに身近にお手本となる夫婦がいたとは意外だった。