院内夫婦の甘い秘密~恋と仕事と、時々魔法~

 めちゃくちゃ自然にデートに誘っている……。

 双子の姉に助言されたというのもなかなかリアリティがあるし、凪にしてはテンション抑えめのまともな文章でホッとする。

 しかし、このデートが実現した場合、千石先生と会うのは私なんだよね……。

 いずれ結婚というイベントが待ち構えているのだからデートくらいで怖気づいている場合ではないけれど、人生で一度も縁がなかったその甘い響きに心拍数が過剰に増える。

「デートも凪が行ってくれれば気が楽なんだけどな」
「それじゃ意味ないでしょ。結婚するのは杏なんだから」
「わかってるけど……」

 うじうじ膝を抱えていたら、手の中でスマホが短い音を立てる。ドキッとしながら顔を上げると、開いたままだったトーク画面に千石先生からの返事が表示されていた。

【それなら、今月最後の日曜日はどうだ? 学会に参加した代わりの休みをそこに貰えたんだ。杏先生も元々公休だ】

 どうやら早速シフトを確認してくれたらしい。

 デートをするか否考えるだけでも落ち着いていられなかった私としては、いきなり具体的な日程を提案されても心が追いつかない。

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